先日の講義の際、いつもこのブログを読んでくれていて時々コメントもくれる先生から更新を催促されてしまったので、久しぶりに書いてみる。
アリストテレスは著書「形而上学」の中で、医者というのは人間一般を健康にするのではなく、特別な個人を健康にするのであって、たまたまそれらの対象が共通して人間であるから人間を健康にすると言われているだけであるということを書いている(ややこしい文章だと思われるだろうが、原文はもっとややこしい)。
講義の際に受講者から、あるいは診療の際に患者さんから、よく「一般的な」症状に対する対処法を聞かれる。聞きたい気持ちはよくわかるのだが、答える方は非常に答えにくい。
肩こりにしろ冷え性にしろ、すべての人に共通する原因はないし、すべての人に有効な対処法もない。
質問者がその症状に困っている患者さんであるのなら、その人に合った対処法を答えるので何も問題はない。しかしそうでなければ、できるだけ多くのケースを想定してそれぞれの対処法を答えるのだが、いつも語り尽くした気はしないし、質問者が患者さんである場合、考えていたようなシンプルな答えが返ってこなくて困惑するようである。
私見では、オステオパシーの考え方というのは、自然を征服し克服しようとするのではなく、自然の法則に任せようとする点で一般的な医療よりも普遍的であるが、その実際のアプローチはより個別的である。つまり、患者さんを人為的な枠組みの中に押し込めようとはせず、その人のその時の状態をそのまま受け入れて、その時点で最善と思われる対処を行う。
私の講義に何年も続けて来てくれている先生たちはその点を理解した上で質問をしてくれているからいいのだが、相手が患者さんとなると、やはりいつも困ってしまうのである。
More from my site
The following two tabs change content below.

所長
院長 : オステオパシー 川原治療院
ここに書かれていることは一人のオステオパスの個人的見解であり、オステオパシーの標準的な考えとは限りません。批判や意見は大歓迎です。

最新記事 by 所長 (全て見る)
- オステオパスとして考える - 2018年4月25日
- 生命、エネルギー、進化 - 2018年3月27日
- 量子力学 - 2018年3月24日