雑感 2017.9.6

我々にとって最も大事なものの一つは、患者さんとの信頼関係の構築である。まあ、簡単にはいかないよね。

昔の医者は、「必ず治ります」「私が来たからもう大丈夫」という言葉を使っていた。これがどれだけ患者を安心させてきたかわからない。しかし、これらは現代では禁句になっている。訴えられたら必ず負けるからである。我々は学校で、修業先で、こういう台詞は絶対に言わないように教育されてきた。

その代わりに、現代、患者さんを安心させるために求められているのは、「素人にもわかりやすい説明」である。

しかし、私は常々こう思っているのである。

「人間も病気も素人にわかるほど単純じゃないから我々のような専門家がいて、しかもその専門家がそれを理解するために一生かけて勉強し続けるほど複雑なものなんだよね」と。

患者さんを安心させるため、そして生計を立てるため、私も自信満々に説明するのだが、心の中ではモヤモヤしたものが渦巻いているというのが本音である(もちろん多くの場合、治療自体には自信があるのだが)。

ネットやメディアで見かける「素人にもわかりやすい説明」は、専門家の目から見ればツッコミどころが満載だし、「まあそういうパターンもあるよね」といった程度である。しかし、現代のニーズを満たすため、生計を立てるためにやっているのだということを思えば、目くじらを立てて批判することはできない。

知識も経験も浅かった頃は、先輩や本からの受け売りを心から自信を持って語っていたものである。知識と経験が増えるほど口が重くなっていく。話す内容には多くの場合方便(嘘)が含まれるし、自分の言葉によって誤解や変なバイアスを植えつける可能性もある。昔の偉大な先人たちの多くが「寡黙な人」だったのも理解できる。

論語の「民はこれに由らしむべし、これを知らしむべからず」という言葉は、「民衆には情報を与えず、ただ従わせろ」という支配原理だとして政治家を攻撃する道具に用いられることが多い。しかし私は、「自分には難しいことはわからないが、あの人に任せていれば大丈夫と民衆に思わせ、政治のことに心を煩わせることなく自分の生活に専念できるようにしてやらなければならない」という解釈に同意する。

患者さんとの信頼関係もそうあるべきだと私は思うのだが…

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ここに書かれていることは一人のオステオパスの個人的見解であり、オステオパシーの標準的な考えとは限りません。批判や意見は大歓迎です。

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