不可逆性

日曜日に、私が師と仰いでいる先生のセミナーを受講してきた。そこである先輩(私は「親分」と呼んでいるが、その理由は聞かないでほしい)に、「じゃあ具体的にどうしたらええねん」っていうところをまったく書いていないことを「上手く書いてるねぇ」と褒めていただいたので、今回も同じように書いてみる。

「同じ河に二度入ることはできない」ヘラクレイトス

熱力学の第二法則が示す「時間の矢」に逆らうことは誰にもできない。患者さんの多くが誤ったイメージを持っているようであるが、ケガや病気によって変化した組織はその前の状態に戻ることはない。たとえ以前と同じ状態に戻ったように見えたとしても、それは全く新しい組織なのである。

この世界には変わるものと変わらないものがある。残念ながら、物質的なものはすべて変化する。鉱物でさえ、我々の肉体とはまったく違う時間スケールで変化している。変わらないものは(「愛」と言いたいところだが)自然法則だけである(断言はできないが、変われば間違いなく我々は死滅するだろうから、我々が生きている間に変わることはない)。

人体においては、すべての細胞が新陳代謝によって入れ替わる。その周期は組織の種類や年齢によって異なるが、若い人であれば約3ヶ月ですべての細胞が入れ替わると言われている。

そこで疑問が生じる。ケガや病気によって変化した組織はなぜ変化したままなのか?なぜ新陳代謝の際にもとの正常な組織に戻らないのか?

そもそも、形態を決定するものは何なのか?

多くの人はDNAだと答えるだろう。しかし、変化した組織内ではDNAの塩基配列も変化しているというわけではない。コピーの際にエラーが生じることがあっても(それらの細胞は免疫系によって破壊される)、基本的にすべてのDNAは発生の時から死ぬまで同じ配列である。

DNAの特定の部位がONになってしまったからという意見は説得力があるし、おそらく正しいのだろう。しかしDNAの働きは、コンピューターがキーボードなどの周辺機器からの入力に対して完璧にプログラムを実行するのに似ている。どちらも自発的に何かを行うことはない。DNAにプログラムを実行させるにも、プログラムそのものをアップデートするにも、外からの入力が必要なのである。

ケガや病気によって変化した組織がもとに戻ったように見えたとしても、組織がもとに戻ったのではない。その組織の形態を決めるプログラムがもとに戻ったのである。

なぜ戻ったのか?

それは外からの入力が変化したからである。つまり、治療とはその入力を変化させることなのである。

その入力はどこからもたらされるのか?

その問いに明確な答えを与えることは私にはまだできないが、抽象的に言えば「場」だと思っている。それはハロルド・サクストン・バーの言う「生命場」やブレックシュミッドの言う「代謝場」などが関係しているのかもしれない(ルパード・シェルドレイクの「形態形成場」は面白いアイデアではあるが、ここでは当てはまらないと思う)。しかし、それらがすべてでもなさそうである。

いずれにせよ、我々オステオパスはケガや病気を治すのではない。患者を治すのがオステオパスなのである。

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ここに書かれていることは一人のオステオパスの個人的見解であり、オステオパシーの標準的な考えとは限りません。批判や意見は大歓迎です。

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